日本証券業協会の上場引受に関する自主規制案が意味不明過ぎて…夏②
昨日のエントリー『日本証券業協会の上場引受に関する自主規制案が意味不明過ぎて…夏①』の続きです。前回はこの自主規制に関係してきそうな基礎知識のうち2つ、未上場企業の資本政策と未上場株式詐欺について簡単に掲載しました。今回はその続きです。
この自主規制の是非論の前に基礎知識 – 上場時の証券会社の役割 -
企業が上場する時には複数の外部機関と協力する必要がありますが 、そのうちのひとつが証券会社です。証券会社は上場を企図している企業が、上場に値する企業なのか、上場後の情報公開に耐えうる体制を整備しているかなどを審査し、審査を通過した企業を取引所(東証や大証等)に推薦します。
今回の自主規制案が通ると、この「証券会社からの推薦」を得ることが出来ないため、100%上場ができなくなります。だからこそ皆が騒いでいるわけです。====
余談ですが、証券会社の上場関連部署は大きく分けて「営業」と「審査」に別れています。営業は上場を企図している企業に「上場審査に耐えうる体制作りのコンサル」を中心としたサービス提供をする代わりに、上場時の主幹事証券会社として指名してもらうことを目的としています。つまり企業を上場させたいという意向を持っています。審査はその名の通り、推薦してよい企業なのかを評価します。より利害関係者を明確にすると、自社の顧客(投資家)に対して、この企業の株式を販売しても大丈夫か(投資家に損失が出ないか)、この企業を上場させることで自社の評判が落ちないか、などを重要視する意向を持っています。
先般世間を騒がせたエフオーアイの主幹事証券会社はみずほインベスターズ証券でした。ここは営業と審査が同部署なんですね。。。これ以上は言いません、言いたいことは伝わるでしょうか?
この自主規制が未上場株式詐欺撲滅に貢献するか
結論から言うと貢献しないでしょう。理由はいくつかありますが、私が最も大きな理由と考えているのはこれです。
未上場株式詐欺をする会社は上場する気がない
当然、個人投資家に株式を販売して、逃げる(あるいは計画倒産)わけですから、そもそも上場なんてする気ありません。上場する気があったらそれは詐欺ではないでしょう。。だから証券会社が審査や推薦をしてくれなくても問題ないわけです。
さらに、証券会社が引き受けてくれなくとも問題なく儲かると説明も出来ます。①経営者や②顧問は、これから騙そうと思っている③個人投資家にはこう言えばいいわけです。「ライブドアショックとリーマンショックのせいで新興市場は壊滅状態で、上場しても値が付かない。ただ、うちの会社のように新規性があって儲かるビジネスであれば、国内外の優良企業から買収の声がけがある。この場合市場取引ではなく、相対取引(1対1での話し合い取引)だから、市場で株を売るより売却価格がぶれない。大きく儲かる可能性はなくなるが、数倍の儲けが出る可能性は以前より高くなる」とかなんとか。
この自主規制案が実施されても、未上場株式詐欺の件数や被害総額の増減には影響しません。むしろ影響は別のところに、日本経済への悪影響という形で現れる可能性があり、議論になっています(いや、反対意見が見当たらないという意味では議論にさえなっていないかもしれませんが)。
この自主規制案が日本に悪影響を及ぼす!?
端的に言うと、上場できない会社が増えるということになり得ます。それは経済成長のエンジンである新興企業(ここは議論の余地があるかもですが)の成長と出現に悪影響を及ぼします。
新興企業の成長にはカネが必要です。彼らは一般的に経営資源に乏しいのため、情熱とアイデアと時代の流れを使ってサービスを提供し、儲けていきます。よしこれはイケル!と思い、さらなる投資を行おうとしても新興企業なので信用力に乏しく金が集まらない。上場していれば増資による資金調達や上場企業であることによる信用力の向上により資金調達がプラスアルファで出来たりします。
また、上場することによる創業者利益が新たな起業を呼びます。GREEの田中社長は創業5年で何千億円の資産を手に入れました。世に価値を提供できる人材が、大企業にいるよりも起業する方がよいと思ってくれないと、価値ある企業(あるいは起業)は増えません。
新規上場が減少することによる悪影響がある以上、安易な自主規制は日本経済の停滞の長期化を招くかも知れません。
・・・っていうのが基本的な議論かと思います。僕はそうならないと思いますけどね。僕が考えているのは「この自主規制案が実施されても、誰にも何の影響も及ぼさない」ということです。
注:正確に言うと、真面目に上場を目指している企業が個人投資家からの資金調達をしないインセンティブが働いたり、個人投資家から資金調達をする際に有価証券届出書や有価証券報告書を書く手間(コスト)が発生するので、悪影響は出るのですが、まぁ大したことないでしょう。
追記DESの場合はどう考えるんでしょうかね、この自主規制案的には。ふと気になりました。
この自主規制案は人畜無害
人畜無害だと思うんです。上述の通り、詐欺は減少しませんので、いい影響は皆無です。また、上場できない企業が減るかというとそうでもありません。抜け道があるからです。
2.「『有価証券の引受け等に関する規則』に関する細則」の一部改正について
適正な資本政策目的で行われたと考えられる株券等の募集等について、引受け禁止の適用除外として規定する。
という記載があります。つまり、詐欺目的でないと考える理由があれば、あるいは、詐欺目的でないと証券会社が判断できれば、個人投資家から資金調達していてもOKなんです。基準が曖昧過ぎますので、必ず骨抜きになります。骨抜きになると言うより、その時々で都合の良い解釈が横行し、結局無意味になるといったところでしょうか。
大丈夫、悪影響も大してありません。こんな自主規制したって意味ないんです。
ところで、日本証券業協会というのは、証券会社等のえらいさんが集まっています。彼らは疑う余地のないほど超優秀な方々です。凡人ではわからないレベルです。スーパーサイヤ人と言ってもいいかもしれません。
では、なぜこんなにも優秀な方々が、かくもしょうもない自主規制案を考えるのでしょうか?
これについてはまた別エントリーで!
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