京都にある一澤帆布工業をご存じでしょうか?左記の画像にあるような、上質な鞄を製造し、日本中に多くのファンを抱えている鞄メーカーです。多くのファンに愛されていた一澤帆布工業ですが、2001年に先代の一澤信夫氏が亡くなられてから、相続争いが泥仕合化し、2009年に解決したものの、2010年7月に新たな火種が生まれています。
実は、私の母がこの一澤帆布工業のファンで、長期間愛用していますので、この会社については小さな頃から知っていました。就職してから相続争いが泥沼化していることを知り、大変悲しく思った記憶があります。
相続絡みで何が、何故起こったのか、そしてどうしていればよかったのか。そんなことをいくつかのエントリーに分けて書こうと思います。今回はその1回目です。
僕も詳しいところまで知っているわけではありませんが、色々な記事を読む限り、1980年頃までは売上高1億円程度の零細企業、朝日新聞に就職していた三男の信三郞氏が経営に参画するようになり、2001年には年商10億円を超え、職人も60人程度抱える立派な企業になったそうです。
先代死後のゴタゴタで、一澤帆布工業は営業停止中ですが、実質的に株式会社一澤信三郎帆布が後を継いで営業を継続しています。リンク先ではネットショップとして鞄の販売も行っています。製品価格を見てみると、恐らく客単価は@12,000~13,000円程度かなと思います(適当)。原価率は恐らく低く、60人の職人に給与を支払ったとしても、相応の利益額を確保しているものと思われます(妄想ですが、売上10億円/経常利益1~1.5億円 程度はあるのではないかと)。仮に、上記の利益水準が的中しているとしたら、それは当然、この企業が大変高品質な製品を供給し続けていることを意味していますので、素晴らしいことです。
冒頭に貼り付けている鞄はコレです。ここにノートパソコンと電子書籍、iphoneとガラケー、WiMAXのモバイルルーター、あとは電池とノートとペンを入れていれば、完璧です。それほど重くならないでしょうし、出かける時はそれだけ持てば完璧になりそうです。くぅ・・・金さえあれば全て揃うのに。。。はっ!下らないことを言ってしまい失礼しました。
とにかく、非常にいい製品を作っている優良中小企業だということです。そんな一澤帆布工業に何が起こったのでしょうか?
2001年に先代の信夫氏がお亡くなりになり、遺産が長男・信太郎氏、三男・信三郞氏、四男・喜久夫氏にそれぞれ相続されることになります(次男は生後間もなく死去)。信夫氏の遺産は大きく分けると「不動産」「有価証券・現預金」「一澤帆布工業(以下、当社)株式」の3種です。問題は当社株式ですが、そのときの当社の株主構成はココによると下記の通りです。
一澤帆布の発行済み株式は10万株。信夫氏の持ち株は6万2000株で、残りは生前贈与として信三郎夫妻に2万5000株、喜久夫氏に1万3000株が渡っていた。
つまり、62%の当社株式が「誰に」「どの程度」相続されるのかが当社経営上の問題になります。
信夫氏は、奥方が1997年にお亡くなりになった際に遺言書を書くことを決意し、遺言書[1]を執筆します([1]と添え字が振ってあるのは後ほど理由が明らかになります)。その遺言書[1]によると、
というように遺産を分配するよう指示されていたそうです。三男の信三郞氏は生前から「会社を経営できれば他はいらん」と仰っていたそうで、遺言状の中を確認し、先代信夫氏が信三郞氏の意向を汲んでくれたことを喜んだそうです。端株が少し合いませんが、この遺言書[1]の通りにいけば、当社株式の65%が三男夫妻、残りが35%が四男で、まぁ丸く収まっていました。
しかし、この遺言書[1]の開封4ヶ月後に、長男・信太郎氏が遺言状[2]を持ってきます。曰く「遺言書[1]は信三郞氏が信夫氏に無理矢理書かせたもので、正式な遺言書は遺言書[2]である」とのこと。遺言書[2]の内容のうち、当社株式の内容のみ抜粋すると、信夫氏所有株式のうち80%を長男に、20%を四男に相続させるというものでした。長男と四男が結託すれば、当社の実権は掌握できる内容です。
信じられないし納得できないのは三男・信三郞氏です。長男は銀行に定年まで勤務し、家業には関わらず、晩年は先代とも疎遠でしたし、四男は1996年までは家業に関わっていましたが、体調を理由に退職しており、当社のことは信三郞氏が見てきたからです。
2通の遺言書が双方先代が書いたものであれば、作成時期が新しい遺言書[2]が有効です。信三郞氏は、長男・信太郎氏の出してきた遺言書[2]が偽造されたものだとして裁判を起こします。
こうして、上質な鞄メーカーの株式の行方はお家騒動として泥仕合に発展していくのです。。(続く)
[...] 前回記載の通り、2通の遺言状が出てきました。「会社の実権が三男のものになる」日付が古い遺言状[1]と、「会社の実権が長男のものになる」日付が新しい遺言状[2]の2通です。両方が [...]
[...] の「遺言書偽造」ですから、一般的な相続問題・事業承継問題と一緒にするのはよくないと思いますけど。まぁいくつかエントリーを書いていますので、是非読んで頂きたいと思います。 [...]